リスク事例① 未払い残業代問題
A社を1か月前に退職したBさんが,
未払い残業の件を,労働基準監督署に申告。
労働基準監督署の労働基準監督官(以下「監督官」といいます)が,
調査のためにA社に来ました。
A社は,従業員5名の小売業。
「残業代は基本給に込み」という約束で別途支給していません。
社長が監督官に対応しました。
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社 長「面接時に残業代は基本給に込みの給料ということで,
本人と合意しています」
監督官「それでは,何時間分の残業時間として,
いくらの残業代が基本給に含まれているか,
明確にできる労働条件通知書や,就業規則等はありますか?」
社 長「・・・」
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「残業代は基本給に込み」という約束は,
面接時に口頭で行っただけでした。
いままで誰も文句を言う者もなく,
特に気にとめていなかったのです。
なお,労働条件通知書は,
インターネットからのダウンロードした雛型をそのまま使用しており,
「残業代は基本給に込み」の旨は明記していません。
就業規則は従業員10人未満であったので作成していません。
「残業代は基本給に込み」(以下「定額残業制」といいます),
この支払い方法自体は違法ではありません。
しかし,定額残業制が認められるためのハードルは高く,
運用には細心の注意が必要です。
口頭での労使の合意だけでは,まず認められません。
そのような訳で,社長の「定額残業制」の主張は,
監督官に認められませんでした。
その後,労働喜寿右方第37条違反(割増賃金を払っていない)により
労働基準監督署から是正勧告を受けてしまいました。
社長は納得いきませんでしたが,
知り合いの弁護士や社労士に相談したところ,
「労働審判や裁判をやっても勝ち目は薄い」
「是正勧告に従って残業代を払った方がよい」
とのこと。。
結局,A社は是正勧告に従い,
正確な労働時間を集計し直し,
全員分の未払い残業代として,
約200万円を支払うことになってしまいました。
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今回取り上げた事例は,
労働基準監督署の調査(申告監督)ですが,
未払い残業代の請求は,労基署だけに限りません。
弁護士などを通じて,内容証明書が届く場合や,
個人で加入できる労働組合から,
団体交渉を要求される場合もあります。
労働基準監督署はあくまで,
行政機関として中立の立場ですが,
依頼を受けた弁護士や労働組合は,
依頼者である従業員(退職者含む)の味方ですので,
全面的に権利を主張してきます。
請求者側からみれば,
過去分の残業代の請求はもちろん,
退職後であれば,年率14.6%の遅延損害金が請求できますし,
訴訟になれば,未払い残業代と同額の付加金を請求することも可能なのです。
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未払い残業代対策を講じる上で,
“就業規則”は非常に有効なツールになります。
「就業規則の有効性」の説明ページは >>こちら
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